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近藤 明美さんの病院ボランティアインタビュー写真

がんの診断・治療技術が発達したことによって、日本では20〜64歳の働き世代であらたに「がん」と診断される人は1年間に男性11万人、女性10万人と推計されています。また、東京大学医療政策人材育成講座で行われた「がん患者の就労・雇用支援に関する提言」では、がん患者の4人に3人は「今の仕事を続けたい」と望んでいますが、実際には3人に1人が「がん診断」を受けた後に転職をしていることが分かっています。
今回は、ご自身もがんの経験をお持ちで、現在は社会保険労務士として「がん患者・がん経験者の就労支援」を行っている近藤明美さんに「がん患者・経験者の就職活動の現状」「就労者が、がんになった時の対応」「がん患者が受けられる支援」についてお話を伺いました。

がん患者さんの就職活動の現状

近藤さんが社会保険労務士として行っている「がん患者・経験者の就労支援」について教えて下さい。

就労の専門家として、がん患者が治療を受けながら働き続けることができるようポイントや利用できる制度、就業規則の注意点などをお伝えして、様々な選択肢があることを知ってもらえるようアドバイスしています。

例えば、医療機関でがん患者やそのご家族向けに「就労相談会」を開催しています。就労相談会は予約制で、お一人ずつ対面式で相談を受けており、働きやすい企業の探し方や働き方のアドバイスをすることもあります。その他には、企業のがん対応支援、がん患者・経験者向けの就労支援セミナーなどを行っています。

がん患者・経験者ならではの「就労問題」にはどのようなものがあると感じていますか。

仕事をしながら治療を継続される方におかれては、がんと診断される前と同じ時間働けるとは限りません。また治療の副作用で、同じように仕事ができないこともあります。治療の副作用で今までの仕事を継続できずキャリアチェンジを余儀なくされることも少なくありません。

がんに罹患したことで、治療や副作用の関係で「働く時間」や「仕事内容」など検討しなければならない要素が複数あり、しかも並行して考慮しなければなりません。そのため、不安を抱えどう対応すべきか混乱される方が多いのが現状です。置かれている状況はがん患者・経験者によって様々なので、ご相談内容によって「今の仕事を継続したい」方、「転職や転属といったキャリアチェンジを行いたい」という方など一人ひとりに合ったアドバイスを行うようにしています。

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がん患者・経験者が転職される場合におすすめの職種や人気企業の特徴などありますでしょうか。

がん患者・経験者の方は体力的に難しい仕事内容もありますので、職種でいうと事務系などのデスクワークが人気です。デスクワークにはパソコンのスキルが欠かせませんのが、未経験でもITの知識・技術を身につけることでステップアップされる方もいます。経理などの仕事に興味を持たれて簿記の資格を取得される方もいらっしゃいますね。

勤務形態という点では、「フレックスタイム制」や「在宅勤務制度」を取り入れている企業なども注目されています。社会全体の流れとして自宅で働くことが可能な企業や、働く時間が定時ではなく働く人の裁量に任されている企業が徐々に増えています。場所・時間にとらわれないので、治療と仕事を両立したいがん患者・経験者の方にもメリットのある制度だと思います。

また、がん患者・経験者の方に「がんという病気に理解がある企業や、がん経験者が経営している企業はないか?」という質問を受けることは多いです。がんの治療と仕事を両立する上で、病気に対して理解がある企業に勤めたいという気持ちは自然なものです。しかし、一般的な求人情報にはその点に関する情報が欠如しているため、がん患者・経験者の方は応募自体を躊躇している方もいらっしゃいます。

会社が「病気への理解度」を示すことはマッチングの点から見て、双方にメリットがあると思います。このような情報も考慮して求人を探す仕組みはないのでしょうか。

国の取組みとして、全国のハローワークで(各都道府県に1箇所、多ければ2箇所)、長期療養者のための就職支援事業を行っています。この事業ではがん診療連携拠点病院などへの出張相談による職業相談を行っています。

勤務形態という点では、「フレックスタイム制」や「在宅勤務制度」を取り入れている企業なども注目されています。自宅で働くことが可能な企業や、働く時間が定時ではなく働く人の裁量に任されている企業が徐々に増えています。場所・時間にとらわれないので、治療と仕事を両立したいがん患者・経験者の方におすすめです。

このような仕組みや情報をうまく利用すると、がん患者・経験者の方も転職・就職活動がスムーズになるのではないでしょうか。

がん患者が抱える面接・就労問題

がん患者・経験者の方が、面接などの応募の場面において躊躇されていることはありますか。

転職や就職活動の際に「企業に病気のことを話した方がいいのか?話さなくてもいいのか?」という質問を受けます。がん患者・経験者の心理として”病気のことを話すと転職・就職に不利になるのではないか。しかし伝えないことで働き始めてから会社に迷惑をかけることや、自分ができない仕事を依頼されるのではないか”という不安があるため、このような質問をされているのだと思います。

私からは「伝える必要性と自分の希望のバランスを考慮して、伝えるのか、伝えるならどこまで伝えるのか決めてはどうか」とお伝えしています。最も大切なのは、業務について支障になることはあるか、配慮して欲しいことがあるか、という点です。具体的には「体調・通院頻度・労働時間・休み・病院の体制(土曜日の診療・治療が可能なのか)」の5つの点について整理し、病気について伝えるかを一緒に検討しています。

例えば、3ヶ月に1回通院する方の場合、ケースバイケースですが、業務への支障という点で問題ないので伝えない方が多いです。しかし、月1回平日に通院する必要がある場合は、事前に会社に通院のことを伝えていないと「あの人はどうしていつも定期的に休んでいるの」と誤解が生じて働きづらく感じる場合もあります。勤務体系がシフト制の場合、時間調整しやすいので会社に病気のことを伝えないという方もいらっしゃいました。

応募時にがんの治療歴を伝えずに採用された場合、のちに問題になったケースはあるのでしょうか。

私が関わった中では、今まで問題になったケースはありません。就職した後に残念ながらがんが再発した方もいらっしゃいましたが、すでに一定のパフォーマンスを見せた後で企業側との信頼関係が構築できていたこともあるかと思います。働く上で大切なのは、会社とのコミュニケーションや関係性の構築だと思います。

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病気を理由に企業から退職を勧められるケースはあるのでしょうか。

結論からお伝えすると退職を勧められるケースはあります。
働き始めたばかりで休職制度が適用されず、有休がまだ付与されていない試用期間中にがんと診断され治療や入院の必要がでてきた場合は、退職を促されるという事例がありました。がん患者・経験者ご本人も会社に迷惑をかけたくないと感じることが多く、結果的に自己都合で退職されるという流れになることもあります。また、内定〜入職するまでの間にがんの診断を受けた方は残念ながら内定取り消しになりました。社長さんから「今は入社させてあげられないけど、治療が終わったら連絡して」というお話があったそうで、治療を頑張りたいとおっしゃっていました。

休職制度は企業が任意で決めているものなので、法的にがんの方を守れる制度が整っていないのが現状です。

退職を勧められたがん患者・経験者は必ず辞めなければいけないのでしょうか。

会社が退職を勧めてきた場合に、法的には必ずしも辞めなければいけないものではありません。働き続けたい(退職したくない)という意思があるならば、その意思を伝えるとともに退職の勧めに同意しないこともできます。

また、残念ながら退職に至ってしまう場合、そのタイミングによってメリット・デメリットがあるので注意が必要です。会社都合退職(解雇など)で退職になると、失業手当の支給期間が自己都合の場合よりも延長されます。がん治療で支出が増えた上、仕事を辞めて収入が減ることがほとんどです。失業手当は再就職活動の際に収入を補償する貴重な制度であり、上手に制度を利用されることが大切です。また、健康保険に加入している方が病気で休業すると、給与のかわりに傷病手当金を受給できます。しかし、治療開始前に退職してしまった場合、この保険給付を受けることができません。傷病手当金が支給されている間に会社を辞めた場合、退職後も継続して手当を受けることができるケースがあります(一定の要件を満たす必要があります)。このように、会社をやめるタイミングによって受けられない手当がでてくることを知っておくことが重要です。

がんなどの病気を理由に企業から不当な待遇を受け、法的に対応された事例はありますか?

事例数としてはかなり少ないのではと思います。あくまでも私が関わった中でのお話になりますが、病気になったからすぐ辞めてもらう・・・とはならないというのが一般的ですね。まずは、休職制度など会社の就業規則を適用して対応しています。しかし、小規模な企業では、誰か一人が欠けでも大変な状況であり、対応に苦慮していると感じます。

一つ事例をあげるなら、がんを患った方がフルタイムで復職されたのですが、病前と同じ働きをしているにもかかわらず一方的に給与を下げられ説明もないという事案がありました。ご本人は就労継続を望まれていましたので、上司との話し合いをしようと努力しましたが、数か月経っても状況は改善されませんでした。これは違法行為ですあり、ご本人の希望もあって、労働局の「あっせん」という行政的な手続きをとったことがあります。結局、両者の話し合いのもと、不当に下げられた給与分を企業が従業員に支払うことで和解することができました。

がん患者・経験者の就労をサポートする仕組み

今後、がん患者・経験者をとりまく就労環境は整ってくるのでしょうか。

パソコンや通信技術が発達して、職種や仕事内容にもよりますが、時間や場所にとらわれない働き方、例えば、フレックスタイム制や自宅での就業、ノマドワークなどが可能な社会になりつつあります。このような柔軟な働き方を可能とする制度がさらに広がっていけば、がんとともに働きやすくなるでしょう。

がん患者・経験者の中には「長時間働けない」という方もいらっしゃいますが、最近は育児・介護をしながら働ける人を増やすために、一人分の仕事を分業するといった働き方の改革が進んでいます。このような働き方を利用して、短時間でも働くことが可能になる場面が今後増えてくるでしょう。この分業制度は企業にとってもメリットがあります。急遽誰かが仕事に来れなくなったとしても、もう一人でカバーするといったリスク回避にもつながるためです。

分業において、1つだけ課題があるとすれば給与面です。働く時間が短いためもらえる給与も少ないというのが一般的です。それまで正社員で働いていた方から見るとパート社員といった形態で働くことに抵抗がある方もいらっしゃいますが、働き続けることを優先するのであれば、体調や治療に合わせた働き方としての選択肢になると思います。仕事のブランクがあると採用を躊躇されやいというのも理由の一つですが、パート社員として働き始めた結果、その能力を買われて常勤として働けるようになった事例も少なくありません。

がん患者・経験者の再就職・就職をサポートする職業訓練や就業支援などの仕組みはあるのでしょうか。

あります。スキルアップや未経験の職種に就く場合は公共職業訓練が有効です。公共職業訓練には、介護士の資格取得を支援したり、会計知識を学べたり、IT技術を習得できるものまで幅広く用意されています。この訓練は3ヶ月間、平日の昼間に講義があり、公的な制度なため受講料は無料になっています。

この制度を利用したがん経験者は、それまでアルバイト経験しかありませんでしたが正社員として事務職に就職できたという事例もあります。訓練生の約7割が訓練後90日以内に就職できているという実績があります。ちなみに、埼玉では女性活用に力を入れており、女性向けのセミナーや職業紹介・パソコン教室などの勉強を無料で受ける制度があるのでうまく活用されてみてはいかがでしょうか。

がん患者・経験者の方が利用できる職業訓練やセミナー情報はどこで手に入れることができますか?

ネット上でも検索できますが、情報が分散しているため見つけづらいかもしれません。そこでオススメしたいのが、ハローワークに置かれているチラシ情報です。職業訓練だけでなく、単発のセミナー情報に関するチラシが一箇所にまとめられているので手間をかけずに情報収集できます。

がん患者・経験者の方が受けられる治療費などの経済的なサポートについて教えて下さい。

高額な治療費を支払わなければならなくなった時に利用できるのが、高度療養費制度という治療費助成です。この制度は、一定の自己負担限度額を超えた治療費が後で払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢・所得状況によって変動しますので詳しくお知りになりたい方は、加入されている健康保険や医療機関のがん相談支援センターに相談してみてはいかがでしょうか。

自営業の方々は注意が必要です。会社勤めの方と違い、治療で仕事を休業する間は無収入になる可能性があります。国民健康保険に加入されている方は、市区町村に医療費の減免や支払い猶予を相談できる場合もあります。しかし、利用できる制度は限られていますので、事前に資金に関することや同業者との連携を図りいざという時に備えておかれることをおすすめします。

がんとうまく付き合い、就職活動を成功された方について教えて下さい。

がん治療で2年半のブランクがある40代の女性が、職業訓練を受けに来られました。最初は、弱々しく元気がない印象でしたが、3ヶ月間平日毎日ある講義を一日も休むことなく受講され、少しずつ自信がついて明るくなっていくのが目に見えてわかりました。訓練を通して「社会に出ても大丈夫かも」と自信を取り戻されたように見えました。職業訓練を終了後、人材紹介会社に依頼して3〜4社の面接を受け、フルタイム(人事・総務の事務職)の仕事に紹介予定派遣で採用が決定しました。現在は、正社員として活躍されています。

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