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宮田 章子さんの病院ボランティアインタビュー写真

女性の社会進出に伴う高齢出産の増加、新生児医療の発展による低体重新生児生存率の改善の影響を受け、心臓疾患や神経系疾患といった慢性疾患を抱える小児が増えていることをご存知でしょうか。
このような病児は、入院できるベッド数は限られているため在宅にて治療・ケアを受けています。しかし一つ一つの疾患が重い上に、ケア範囲が多岐にわたる小児在宅医療を専門にするクリニック・訪問看護ステーションが限られており、在宅医療の負担は家族に依存しているのが現状です。
そんな中、立川市で小児在宅医療に10年以上携わっているさいわいこどもクリニックの理事長である宮田先生に「現場から見えてくる小児在宅医療の現状」についてお話を伺いました。

小児在宅医療の現場で起きていること〜さいわいこどもクリニックの場合〜

宮田先生が小児在宅医療に携わることになったきっかけについて教えて下さい。

2003年に、地域の保健師さんから「筋肉の疾患で約3年間入院している男の子を診てもらえないか」と相談を受けたのがきっかけです。声をかけてもらえた理由を今になって考えると、男の子の自宅がクリニックに近いこと・私のサブスペシャリティ分野が小児神経であったため男の子の疾患とマッチしていたこと、そして開業当時から持っていた「障害を持つ子供たちを地域で診ることができれば・・・」という思いを地域の訪問看護師さんや保健師さんに話していたことが影響したのではないかと感じています。

ただ、当時さいわいこどもクリニックは小児科の来院数が増え私一人では手が回らない状況でしたので、小児科の外来診療を行いながら平行して小児在宅医療まで対応することができるのか正直不安でした。
しかし「まずは直接お子さんや家族の様子を見てみないことには始まらない」と思い直し男の子の入院先の病院に伺ってみることにしました。実際に訪問すると、お母さんが24時間お子さんに付き添いケアを行っていたため、十分な睡眠をとることができない状況が3年間続いている状況を目の当たりにしました。気がつけば「このまま放ってはおけない、できる範囲でやれることはないか」と対応について検討し始めていました。結果的に、緊急対応は難しいこと・外来での診療がメインになることを家族に承諾してもらい、男の子の在宅医療に携わることになりました。

さいわいこどもクリニックでは、そこから小児在宅医療を行っているのでしょうか。

いえ、先ほどご紹介した男の子が在宅に戻ってから約半年後、痙攣を起こして緊急搬送されたのですが、残念ながらそのまま命を全うしてしまいました。
その後、再び小児在宅医療に携わることになったのは4年後のこと、亡くなった男の子のお母さんが、同じ疾患を持った双子を出産したという話を聞いたところから始まります。本来であれば出産前に、お兄ちゃんがかかっていた病院で遺伝相談を受けて双子の胎児が同じ疾患になるリスクについて検討されるべきでしたが、不運にもその病院の産婦人科が閉鎖しており、そのような議論がされることがなかったという話も耳にしていました。

そこで私からご家族に「もし双子の赤ちゃんが自宅に帰るのなら、さいわいこどもクリニックで診せてもらえないか」と相談し、2008年から再び小児在宅医療に関わることになりました。またちょうど同じタイミングで、双子の赤ちゃんと同じ先天性の筋肉疾患をもつお子さんを診て欲しいという依頼があり、計3名のお子さんの在宅医療に携わることになりました。そこから徐々に小児在宅のニーズが増えていきました。

宮田 章子さんの病院ボランティアインタビュー写真

現在、さいわいこどもクリニックで行っている在宅診療部「スカイ」ではどのようなお子さんを診療されているのでしょうか。

2年前に、私の軸足を小児在宅医療に移したことを契機に、非常勤の小児在宅医師の協力を得て様々なケースの小児在宅医療に関われるようになりました。我々のクリニックで小児在宅医療を受けている小児は大きく2つのグループに分けることができます。

まず、新生児期を過ぎて1歳に満たない状態で重度の疾患を持ちながら在宅には入られるお子さんの在宅医療です。最近はダウン症以外の染色体異常を起因とする13トリソミー・18トリソミーといったお子さんの増加が顕著です。これらの疾患を抱えたお子さんは、装着している医療機器も大掛かりなものが多く、今日明日の症状がとても不安定です。場合によっては亡くなることを覚悟して「それでも一度家でお世話してあげたい」というご家族がクリニックに依頼されます。

一方で、病気と長く付き合いながら大きく成長していくお子さんもいます。現在、さいわいこどもクリニックには最年長で31歳の方の在宅医医療にも携わる機会があります。このようなお子さんの場合、長期間にわたって自宅で療養生活を送ることになり徐々に生活する上での身体機能が落ちてくるケースが多いため、年数を重ねるごとにケアの範囲や対応が重くなっていくのが特徴です。今までには、始めは食事ができていたお子さんでも徐々に難しくなり、鼻からチューブを入れ、お腹に穴を開けた結果、肺炎を発症してしまったというお子さんもいらっしゃいました。

このように在宅に入る段階で初めから重度のお子さんから、長い時間をかけて徐々に体が弱くなってくるお子さんの在宅医療を診ています。本格的に小児在宅医療を行っているクリニックはまだ少ないため、東京多摩地区で小児在宅を診ている件数は一番多いのではないかと思います。

小児在宅と病院で受ける医療の違いにはどのようなものがあるのでしょうか。

小児在宅医療は病児や家族の生活を支える点に重きをおいている点でしょうか。

病院はDPC(定額制の医療)という診療報酬を取るため、例えば肺炎で入院した場合の治療内容はある程度決められており、それ以上は保険で認められていないために余分な対応ができません。特に若い先生が多い病院だと「エビデンスがないものはやらない」というスタンスにどうしてもなりがちです。

一方、在宅医療の場合は完治が難しい病気をお持ちのケースが多いため緩和的ケア要素を重要視しています。家族の気持ちに寄り添って「エビデンスがないけどやってみようか。」ということもしばしばあります。「ケアする人の負担をできるだけ取り去ることができ、かつケアを受ける子供たちも気持ちがいいという医療をどれだけ提案して提供していけるか。」という緩和・看取りのスタンスを取る点が病院との大きな違いです。逆に「これ以上の延命措置はやめましょう」と提案することもあります。これらの治療方針や説明方法については、医療スタッフや医師同士で話し合いを行い、どの方向性がもっとも家族やお子さんにとっていいのかコンセンサスをとった上で行っています。

地域密着の小児在宅医療が抱える課題

小児在宅医療が高齢者介護のように機能しないのはどのような原因が考えられるのでしょうか。

小児在宅医療の現場では、求められるケアの種類や量、必要とされる医療知識も広範囲に渡ります。そのため、高齢者の往診時間は1回あたり10分ほどであるのに比べて小児の往診時間は30分以上と3倍の時間がかかります。又、高齢者医療サービスは主に介護保険でまかなわれ優遇されていますが小児は入退院が多く医療保険やその他の複雑な補助制度を利用しなければならず複雑で非効率的です。サービスを提供する在宅医療医・訪問看護師は小児在宅医療の分野に手が出づらくなっているのです。

小児在宅医療の現場でご家族が負担になっている様子をどのように感じていらっしゃいますか。

小児慢性疾患の場合、困難なケア対応箇所が1つではなく複数ある場合が多いにもかかわらず、小児在宅医療をサポートする訪問看護ステーションや在宅医の存在はまだ発展途上の段階にあります。

患者家族は「子供から目を離せない」という生活を24時間365日行っています。言葉で言うよりも現場は壮絶な日々で、気管切開をしている場合はタンの吸引は昼夜問わず数時間ごとに行う必要がありますし、薬の管理、食事・風呂・排泄の対応、緊急時対応、リハビリ、寝たきりの場合は床ずれを防ぐために体を動かしたりすることなど家族の負担は多岐に渡ります。そのため、家族の身体的・精神的状態は常に限界ギリギリです。

しかし一方で、「私がやらなければ、この子の命をつないであげられない」と使命感を持っておられるご家族も多く、ケア自体がお母さんの生きがいになっていることもしばしばです。お子さんとの時間を過ごす中、いくつもの困難を乗り越えて生活されているので、家族の一体感や生活の中で感じる達成感のようなものが生まれてくるのではないでしょうか。

宮田 章子さんの病院ボランティアインタビュー写真

小児在宅医療の現場で家族が望んでいる医療サービスにはどんなものがあるのでしょうか。

短期入所(ショートステイ)≒レスパイトのニーズが非常に高いです。数日間でも療育施設に預けることができれば、家族が身体的・精神的なストレスから解放され、心と体を休めることができます。しかし短期入所できる療育施設数は限られているのが現状です。

また数だけの問題だけでなく、お子さんをできるだけ小さい時から療育施設に預ける習慣をつけておくことが必要と言われています。お子さんが10歳・15歳になった頃に初めて療育施設を利用する場合、家族が慣れていないために施設に預けることに不安を感じ利用を拒むケースも少なくないためです。

さいわいこどもクリニックのある東京多摩地区周辺では、短期入所(ショートステイ)≒レスパイトを行っている施設はありますか。

東京都には療育入所施設が9つありますが、そのうちの6つが多摩地区にあり、東京都多摩地区は東京23区に比べるとショートステイ≒レスパイトといった療育施設数は恵まれています。多摩地区に集中している理由は、「療育施設の歴史的背景があるから」とい点が挙げられるでしょう。

東京と同じようにどこでも短期入所(ショートステイ)サービス≒レスパイトを受けることができるのでしょうか。

都道府県によって状況が全く違います。新潟県は療育施設だけで小児在宅のショートステイのニーズをまかなえています。過疎地域は「療育施設が少ない・自宅近くにない」という理由で、病院に短期間だけ検査入院という形で入院させてもらうという方法をとっています。このように地域によって受けられるサポート体制に違いがあるのが現状です。

小児在宅医療において医療・福祉サービスをコーディネートする機能が十分でないという話を聞きます。宮田先生のご意見はいかがでしょうか。

実は「小児在宅医療を専門とするコーディネーターがいない」という点が大きなネックになっています。

介護保険ではケアマネージャーがその役目を担っていますが、福祉制度・介護制度やサービスをどう最適化するかについて詳しい反面、刻一刻と変わる治療法について、どんな治療方法があり、それをどこで受けられるかという医療的な情報把握までカバーするのは難しいというのが私の意見です。

さいわいこどもクリニックでは、目の前に困っている家族・お子さんがいますので体制が整うまで待つことはできません。そこで本来医療の分野からは離れてしまうのですが、在宅医やスタッフがコーディネートの役割も担う形を取ることも多いです。今までも、自宅訪問時に経済的な支援が必要な時があれば、市区町村の福祉課に連絡を取り状況を説明して対応を依頼するなどの対応を行っています。

小児在宅医療の現場では制度が発展途上であるがゆえに「家族や病児にとって何が必要なのか、どこに連絡すれば助けてもらえるのか」など、自分の範疇ではなくても「おせっかい精神」を持って先手先手で家族やお子さんと接することが求められます。そう考えると、在宅医療の質はそこに関わっているスタッフの人間性に大きく依存する分野なのだと感じます。

小児在宅医療がより良くなるために工夫されていること

他職種の方と連携を図る上で工夫されていることはありますか。

いざという時にお互いが信頼して頼れる相手であることが重要なので、顔と顔を合わせる機会を作るようにしています。例えば、訪問看護師がある家族を訪問することがわかっていれば、あえて同じ時間帯に出向いて顔をあわせるようにしています。

さいわいこどもクリニックでは、スタッフ間の情報共有はどのように行っているのでしょうか。

朝礼での情報共有(申し受け)だけでなく、メール間の連絡を利用しています。夜間に受けた電話の内容や訪問した時の様子をメーリングリストで共有して現状把握と今後の対応予測に活かしています。
メーリングリストの便利なところは、リアルタイムでどこにいても情報共有ができる点です。その日クリニックに来ていないスタッフともタイムラグなく情報共有できる便利なツールだと感じます。

メーリングリスト以外にITを利用したツールを利用されていますか。

患者さんの了承が得られればSNS(コミュニティサイト)を使って情報共有を行う場合もあります。そうすることによって、緊急で入院した時の対応や病状などをリアルタイムに知ることができる上に、後々振り返る際の記録としても活用することができ大変便利です。訪問看護ステーションや救急対応を行っている病院ともSNSなどを使った情報共有ができると大変便利なのですが、ITの活用が広がっていかないのが現状です。その理由は大きく4つあると感じています。

それは「スマートフォンやタブレットといった機器への投資が難しい点」「SNSなどの入力だけで情報共有が完結せずに紙カルテへの二重入力の手間がかかる点」「施設を超えて情報共有する際の書式が整っていない点」「施設を超えて個人情報をやり取りする際のコンプライアンスが整っていない点」です。

今後、ITを利用した情報共有ができるようになるためには「入力の手間を最小限にした共通のチェックリストあること」「各施設の医療スタッフが入力する機器(スマートフォンやタブレットなど)を持っていること」「入力者の情報リテラシーが向上すること」が必要になるでしょう。

病院を退院して在宅に入る場合、病院から在宅医への情報共有はどのようにされているのでしょうか。

最近は病院が退院前の患者さんを対象に実施する「退院支援会議」を通して情報共有するようになりました。この会議は、病院スタッフ・在宅医師・訪問看護師・家族が顔を合わせて話し合いをします。
「誰が何曜日に往診にいくのか」といったサポート体制の整備だけでなく、「お母さんの1日のスケジュールはこうしましょう」という退院後のシミュレーションを行うことでお母さんが在宅に移った時のイメージを持っていただき退院後の不安を最小限にすることができます。また退院支援会議を通して、各医療スタッフが持っている情報の摺り合わせを行い最適なケアを行えるようになりました。

在宅に移る家族にとって非常に意味のある「退院支援会議」ですが、残念ながら病院によっては退院支援会議を行っていない場合もあります。一つでも多くの病院で退院支援会議が行われ、どこに住んでいても同じサポートが受けられるように、小児在宅医療の現場に立つ人間として今後も様々な情報発信を継続していきたいですね。

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在宅医療を受けているお子さんが緊急対応や入院になった場合、病院にはどのように情報共有をされているのでしょうか。

さいわいこどもクリニックでは「緊急時対応表」というものをご家族に渡しています。これは「どのような症状が出た時に緊急連絡が必要なのか」「緊急時にどの病院に連絡するのか」など緊急時対応をまとめたものですが、極力、搬送病院への情報共有は在宅医から病院の主治医に話を行うようにしています。
そうすることで「今日は入院対応が難しいけど明後日なら可能なのでそれまで家で点滴対応にて頑張ってもらえませんか」「どうしてもベッドが空かないので当院では対応が難しいが、他の病院へ紹介します」といったスピーディで臨機応変な対応が可能になります。

また、自宅で「どのような考えでどのような在宅医療を行っているのか」についても伝えることで、病院の主治医は本来提供すべき適切な医療処置ができるようになります。ご家族が説明する負担を軽減できる点も、在宅医と病院の主治医が直接連絡をとるメリットの一つです。

最近は訪問看護師さんとネットワークができてきたので入院前に自宅に訪問していただき準備を手伝ってもらうといった連携も取れるようになりました。

お子さんが緊急対応や入院対応が必要になった場合、地域の医療関係者のネットワークが密であることで、負担の軽減や医療・福祉サービスの向上に大きく影響を与えています。

今後の小児在宅医療の行くすえについて宮田先生のご意見をお聞かせください。

「NICUの医療姿勢がいったいどこに向かうのか」にはこれからも注視していきたいと思います。この方向性によって小児在宅医療に入ってくる子供の数やその疾患範囲が影響を受けるためです。

また医療を受ける家族がどこまで希望しているのか、それをどのような形で実現できるのかについて多職種を交えて考える機会をもっと増やす必要があると感じています。今は、新生児医療が発達して命が助かるものはできるだけ繋ごうとする方向性がありますが、果たして本当にそれが子供本人や家族のためにいいのか、どこまでのラインをサポートしていくのかという医療倫理面での議論がより話し合われる必要が出てくると感じています。

小児在宅医療の現場も「助けて維持して頑張る」という段階から、「子供だけでなく家族をみて何が最善なのか」まで考慮し一緒に考え過程も重要視する段階に移っていくと感じます。家族が後悔しない在宅医療とは何なのかについて模索する過程は、医療処置の選択肢を用意するだけでは十分ではありません。決断を家族に任せることは、決断の責任も家族に背負わせることになるからです。

小児在宅医療の現場では、正解のない決断を突きつけられる場面が多々あります。だからこそ、アドバンスケアプラン二ング(ケア全体の具体的な治療法や療法について確認をとること)を定期的に行い、情報だけでは埋められない気持ちの面にも寄り添った在宅医療が求められてくるのではないでしょうか。

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