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井上るみ子さんの病院ボランティアインタビュー写真

小児科の親の会代表だった経験と看護助手職の経験、家族相談士などの資格を活かし、2013年に病児のきょうだい支援をおこなうNPO法人「こどものちから」を設立した井上るみ子さん。今回は「こどものちから」の設立エピソードやNPO法人として活動することの難しさややりがい、そして病院ボランティアへの未来についてお話を伺いました。

病児の兄弟支援をおこなうNPO法人「こどものちから」について

まず、井上さんが設立されたNPO法人「こどものちから」の活動内容について教えて下さい。

主なボランティア活動内容は、病院にある家族待合室での病児の親やきょうだいとの関わりです。遊びを通してストレス解消をしてもらい、「ここは何をやっても大丈夫なんだ」と安心を持って帰ってもらえたらと思い活動しています。また、「たまには外で遊ぼうよ」という家族内の交流や同じような家族同士の交流を目的としたイベントや、「病児を持つ家族の状況はこうですよ」「きょうだいはこんなに頑張っていますよ」「そこに、こんなサポートがあるといいですよね」という提案を社会にしていけたらと啓発活動などを行っています。そして、この活動を通して「こんな言葉のかけ方があるのだな」「今度、こういう風に声をかけてみようかしら」と家族やきょうだいが自然に感じ取れる場になると、とても嬉しいですね。

「こどものちから」を立ち上げることになったきっかけについて教えてください。

9年ほど前に、日本家族カウンセリング協会で家族相談士という資格を取得しました。その資格をどう活かせるか・・・と悩んでいた時に、娘に相談したところ、「前にお兄ちゃんが入院していた病院が新しくなり、待合室もできたらしいよ。でも待合室に誰もいないから、そこに来たきょうだいにちょっとでいいから遊んでもらったら」と提案されました。その頃、私は小児科の「親の会」で代表をしていたこともあり、小児科の科長と看護師長に掛け合って、月に2回合計6時間、待合室に行くことになりました。

NPO法人にしようと決心された時の話をお聞かせください。

小児科病棟は免疫力の低い子ども達が入院しているので、小学生以下のきょうだいは病棟の中に入ることができません。きょうだい達は、面会のために病院に連れてこられても、病棟入り口の家族待合室で親御さんや入院中のきょうだいが来てくれるのを待っていなければなりません。お家でも病院でも留守番という状態です。時間を持て余してしまうきょうだい児を対象に「小児科の親の会」という枠で活動していこうと思いました。しかし実際に活動してみると、小児科以外でも病院に来ても病棟に入室できず、退屈な時間を過ごす子どもがいることに気づきました。その子ども達に「一緒に遊ぼうよ」と声をかけるためには「小児科の親の会」という枠だけではやっていけない、もっと広げたいという思いが大きくなった頃「団体にするなら手伝うよ」と声をかけてくれる方が出てきました。法人化するためのルールが色々とあり大変でしたが、事を進める中で小児がんの子どもをもった親の方々や闘病中に知り合った方、小児科病棟でお世話になった院内学級の教員から「人が足りないなら手伝うよ」「NPO法人の設立や運営に関わるノウハウを教えるよ」という声をいただき、団体を作るのにはギリギリのメンバーでしたが「こどものちから」がスタートしました。

井上るみ子さんの病院ボランティアインタビュー写真

何も分からない状態でスタートしたので、東京ボランティアセンターのソーシャルワーカーの方に泣きついて、助成金の申請方法や会計方法など色々と教えてもらい、ここまでやってきました。大変でしたがNPO法人として公開されている情報が、小児がんや子どもへのケアというテーマで取材したいという記者の目に止まり、朝日新聞で記事にしてもらうという幸運に恵まれました。その記事を見て、「手伝いたい」と手を挙げてくださる人が10名以上応募されたことで、月2回の活動日を月10回に増やすことができ、現在は毎週月・木曜・第2土曜・第4日曜の11:00~14:00に活動しています。

活動時間をお昼時にしているのには何か理由があるのでしょうか。

活動時間を決めるときに頭に浮かんだのは、病気のお子さんが入院している中、談話室で小さいお子さんを連れてご飯を食べているお母さんの姿でした。片手にはベビーカー、もう片手でご飯を食べる様子から、心身ともに疲労がたまっているのに昼食だけでもゆっくり食べて欲しいと思ったのです。そこでお昼時間にあわせて11:00~14:00に活動することにしました。

活動を始められてすぐの様子はいかがでしたか。

はじめは「今日も誰も来なかったね」という日が続いたのですが、徐々に訪問者が一人二人と増えていきました。子ども達も遊んでもらうことで「おばちゃんがいるなら病院に行こうかな」と言ってくれたり、その結果「病院に行くときに準備が早くなりました」と胸をなでおろす親御さんも増え、病院に来ることから待合室に遊びに行くことへ目的が変わった様子がうかがえるのは嬉しいです。

家族相談士が病院ボランティアとしてできること

井上さんは家族相談士を取得されていますが、その理由について教えてください。

患者会の代表をしていた頃、あるお母さんに「きょうだいだって頑張っているんだよ、きょうだいのことも見てあげなきゃね」と伝えたことがあります。するとそのお母さんから「そんなの分かってるんです。分かっているけどどうすればいいんですか? いま子どもが入院していて、今日の治療、今度の治療はどうするのか、今の状態はどうなのかと日々迫られている。そういう状況の時に、きょうだいをどうしろっていうんですか?」と返ってきました。私は何も返す言葉がありませんでした。
この時、「自分の経験を押し付けてしまうことはとても怖いな」と思ったんです。病児を持つ親御さんの多くは「あなたの経験はどうでしたか、あなたのときはどうでしたか」という質問をしてきますが、根本には「うちの子どもの病気はどうなの、私はどうすればいいの」という混乱の中にいます。しかし家庭環境や病状などそれぞれ状況が違う中で「うちは、こうですよ」と自分の経験や情報を伝えても、役に立たないどころか、逆にそんな経験談が強制力をもって親を混沌とさせてしまう恐れがあると感じました。支援者として向き合うのであれば、自分の価値観や経験を押しつけない方法はないかと考えあぐねていたところ、「ピアカウンセラー」や「家族相談士」という資格を見つけました。

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ピアカウンセラーと家族相談士の違いを教えてください。

ピアカウンセラーは共通項のある者同士、個人対個人のつながりにアプローチするのに対して、家族相談士は「家族というグループを一つ」ととらえ、家族のつながりにアプローチするという違いがあります。
例えば不登校になったお子さんがいる場合「家族のバランスが悪くなっているのはその子がいるからだ」という犯人探しをするのではなく、家族のバランスが崩れていることをそのお子さんが伝えてくれていると受け止めます。家族相談士は「その崩れたバランスを家族全体でちょっとずつ調整していけばいいんじゃない?」と一緒に考えていきます。
人は、一人で生まれて一人で育っているわけではなく、きょうだいや親、おじいちゃんおばあちゃんがいます。そういった関わりの中でどういうつながり方がいいのかを知りたいと思っていたので、家族相談士を学ぼうと思いました。

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家族相談士とは、病児や病児のいる家族にとってどんな存在になれるのでしょうか。

家族相談士は、テーブルのような存在だと思っています。家族の中の問題や不安、こうなってほしいという思いを安心して出せる場所になりたいと思っています。そして「重要なことってなんだろう」と自分で整理して、それを自分の整理棚におさめていける、また誰に相談したらいいのかを一緒に考えていける、そんな存在になれたらと思っています。
また、病児やその家族が自分の中にある偏見を取り去ることが大切だと思っています。例えば、病児を持つ家族が「自分が好きな旅行にいきたいな・・・」という思いがありながら「でも、家族の闘病中に自分のやりたいことを優先しちゃいけないんだ」と制限してしまっているとします。そんな時に、「自分がやりたいことを我慢しても、状況は変わらないよね」と誰かが言ってくれたら、また違う考え方ができるのではないかと思います。
そういった持たなくてもいい荷物を降ろして身軽になることで、ちょっとリラックスして考えることができるようになる、それまで息を吐くことさえ難しかったのが、息をスッとはけるようになることがとても重要だと感じています。

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「こどものちから」の活動で大変だと感じること

活動中に「これは困ったな」と感じることはありますか

私が「隣のおばちゃん」でいられる時は良いのですが、ちょっと踏み込んで「お母さんの目線」になってしまいそうになる時、「いやー参ったな」と思うことがあります。
お預かりしたきょうだいさん同士が、ケンカを始めたときがありました。つい年上のお子さんをたしなめようとしてしまったり、無理に仲裁に入ろうとしたり・・・。お互いの気持ちにしっかりと向き合い、それぞれの言い分を聞いて、子ども自身に考えてもらうように、なるべく誘導せずに対応できないかと、自分のキャパシティの小ささに、まだまだだな~と発展途上にある自分を思わされます。
それから最近は外国からもご家族で治療に来られる方がいます。言葉が通じなくても、遊ぶときにはあまり不自由はしないのですが、待合室を使うときのルールを説明しなければならないときは、とっても困ります。

NPO法人を設立・運営する上で「大変だ」と感じたことを教えてください。

NPO法人のこと何も知らずに立ち上げたので、大変なことばかりでした。法人としてのルールづくりや会計、予算の立て方、ボランティアさんの面接方法など分からないことばかりでした。正直こんなに大変だと知っていたら、NPO法人をつくろうと声をかけられた時に実働スタッフとして活動できる団体を探していたと思います。
また、「自分は何を目指して活動するの」「何がどうなったらいいと思うの」という問いに対する思いが膨らみすぎて動けない時期もありました。そこで、スタッフが「自分一人でもできることってなんなの?」と不必要なものをそぎ落としてくれました。おかげで「待合室にいることなら6年間やってきた。お金がゼロ円になっても、自分のちょっとのお小遣いでなんとかやっていける。そうやってきょうだい支援を中心にやっていこう」と決めることができ、やっと動き始めました。
そういう状態だったので、立ち上げ当時のスタッフの皆さんはとても大変だったと思います。「会計はこうやった方がいいから、相談のるからどういうことかやってみよう、NPOはこういうものらしいよ、どこそこの団体がこういう活動しているので見てみたらいいよ。」とスタッフの皆さんが必死になって道を作ってくれました。

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病院ボランティアが広がっていくために

病院ボランティアが様々な病院に受け入れられるために必要なことは何でしょうか。

病院の邪魔にならない、約束を守る、経済的負担をかけないということは、一般的に病院から求められることが多いと思います。本来は対等な関係になるのがベストだと思いますが、まずは病院に活動を許してもらって、こういった活動が病院にメリットとなることを理解してもらい、安定して活動できるように、時間をかけて信頼関係を築いていくことが重要でしょう。また、宗教団体、物品販売・斡旋に注意が払えるかは、とても重要なポイントだと感じます。

「こどものちから」としてこれから思い描かれていることを教えてください。

病院は365日活動しています。ということは、365日、面会が可能な時間は、病院に来る人たちがいるということです。連れてこられる子ども達のすべての時間をフォローできたらすごくいいなと思います。そして最終的には、大きな病院でも小さな病院でも、誰かがいてホッとできるスペースができるといいなと思います。そのためには「こどものちから」がしていることやその効果を具体的に、社会に向けて発信していきたいです。

どの病院でも家族や兄弟児・病児がホッとできる場が増えるために必要な要素はどんなものがあるでしょうか。

病院(医療者)が、このような場所が必要であることを理解してくれること、活動してくれるボランティアさんやコーディネーターさんが増えること、そして場所の提供や資金も必要になってきます。また、安全・安心な場所にするために、活動の中心となるスタッフ・ボランティアさんが、病児や家族を理解したり、活動中の不安なことを話し合ったりするための学びの機会「事例検討会」や「研修会」も必要になると考えています。
こどものちからでは、今後、「遊び方」「接し方」などの他、「医療者による基本的な治療法や注意点」などの内部研修会も充実させていきたいと考えています。

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