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沖野 広香さんの病院ボランティアインタビュー写真

近年、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限ない期間)のギャップを短縮することによる「医療費・介護給付費用などの社会保障費用の抑制」や「個人の生活の質の向上」が注目されています。
そんな中、昭和女子大学の人間社会学部・福祉社会学科、高齢者福祉ゼミ(吉田輝美ゼミ)に所属する沖野広香さんは、研究テーマとして「世代間交流」を取り上げ、調査を行ってきました。そこには「健康寿命を延ばすヒント」が隠されており、病院ボランティアに応用できる要素を多く発見することができます。そこで今回は、沖野さん本人に研究内容を説明いただきながら、病院ボランティアの可能性についてお話を伺いました。
また、研究指導を担当された准教授 吉田輝美先生からは「健康寿命を延ばすヒント」として地域で活躍するボランティアの事例や、准教授としての立場から「学生のうちに学んでほしいこと」についてお話を伺うことができました。

世代間交流を人生紙芝居で・・・

研究内容について教えてください。

研究テーマは「高齢者と子どもの世代間交流の効果に関する研究-高齢者を対象とした人生紙芝居の実践-」です。

研究対象として協力いただいたのは特別養護老人ホームの入居者です。まず世代間交流前後の違いをはかるために、交流前の「生きがい感アンケート調査」を行いました。その後、今までのライフイベントをヒアリング(ライフストーリー調査)し、その内容をもとに紙芝居(人生紙芝居)を作成しました。世代間交流としては、紙芝居の色塗りを調査対象施設の職員の子どもに協力してもらいました。交流後、再度「生きがい感アンケート調査」を行い、交流の効果をまとめました。
その結果、世代間交流後の方が「生きがい」を高く感じることがわかりました。

沖野 広香さんの病院ボランティアインタビュー写真

“人生紙芝居”というユニークな方法で「高齢者と子ども」の世代間交流を研究テーマにしようと思い立った経緯について教えてください。

まず「高齢者と子ども」を対象にした研究テーマにしようと思ったのは、大学生活4年間で学んだ「社会福祉士」と「保育士」という二つの分野を合わせた研究ができないかと考えていたことが背景にあります。

そんな時、社会福祉士の実習で高齢者デイサービス施設に訪問した際に、小学生や園児と高齢者の世代間交流を行っており、「高齢者と子どもの世代間交流」に絞って研究できないかと考えました。

悩んだのは、高齢者と子どもという2つの世代をつなぐツールとして何を使用するかということでした。高齢者の方にとって親しみのある「紙芝居」を使ってみたい、でも子ども用の紙芝居をそのまま使うことが適切なのか・・・。そう悩んでいた時に、指導教官の吉田先生から「高齢者の方の人生(ライフストーリー)を表現した紙芝居なら、高齢者にとって身近で世界に一つだけの付加価値の高いものができるのではないか」とアドバイスをいただき、“人生紙芝居”を利用した世代間交流の研究をスタートすることになりました。

現場に出て「新しく発見すること」はありましたか。

思わぬ相乗効果があった点でしょうか。
振り返ると「高齢者の方だけでなく、お子さんも楽しめた」、「施設の人が知らない高齢者の一面を新たに発掘することにつながり、施設で働く方と、高齢者との交流を広げることにつながった」「子どもが色付けする際に、職員である親が対象者(高齢者)の日常の様子を伝えることで、子ども自身が対象者(高齢者)の人柄や様子を学びながら色付けが出来た」「子どもがこだわりを持って色付けを行った点を、ライフストーリーを話してくれた高齢者と共有できた」という点が挙げられると思います。

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大学では学べないこと

「大学で学べること」と「現場で学べること」の違いはありましたか?

文献に書かれている内容は、結果が綺麗に数値化され効果が実証されていましたが、現場では自分の思い描いていた通りにいかないこともありました。例えば、予定していた時間に高齢者の方が調査に参加することが難しくなって調整するという「想定外の対応」は大学では学ぶことができない貴重な経験だったと感じます。
それから、協力者がいなければむずかしい研究だったので、ゼロから協力を得るために依頼をすることの大変さややりがいは現場に出てみなければわからないことだと感じました。

研究を通して「嬉しかったこと」を教えてください。

研究結果を発表する場をいただき、いろいろな所から反響があったことです。思わぬところから肯定的な評価をもらえたことも嬉しかったのですが、やはり高齢者から「私のために時間をつくってくれてありがとう」という声をいただいたことが一番嬉しく感じました。そして、協力していただいた施設の方からは「新鮮な取り組みだった、他の場所でもやってみたい」、子ども達からも「楽しかった」という意見をいただき、高齢者だけでなく、研究結果が様々な方にどんどん広がっていくことを肌で感じることができたことは嬉しく感じました。

高齢者の生きがいを向上させるために必要なこと

研究結果を通して、今後、高齢者の生きがい向上につながるのでは・・・と感じていることがあれば教えてください。

ライフストーリーを聞いたときに、高齢者の方から多く出てきたのは「子どもや孫などの家族」の話で、「家族や孫に会うために元気でいたい、健康でいたい」という声です。そこから感じたのは、若い世代と関わりを持つことが高齢者の張り合いにつながっているということでした。家族や職員さん、入居している方同士だけでなく、ちょっと違う世代・メンバーと交流する時間があると、元気の素になるのかなと感じます。

世代間交流は、高齢者以外にもメリットがあるのでしょうか。

交流を通して子ども達からも「楽しい」「自分たちも勉強になった」という声があがり、世代間交流は他世代から学ぶ機会にもなると感じました。私自身、ライフストーリー調査を行うなかで、大正・昭和を生きてきた女性が、手に職をつけながらたくましく、そしてしなやかに生活してきた様を知り、社会に出ても好奇心のおもむくままにやりたいことはとりあえずやってみよう、一つのことにとらわれず、いろいろなことを経験してつながりが広がっていけたら・・・と考えるようになりました。

高齢者の生きがい感向上だけでなく、関わる人全員にとっても学びや楽しさにつながるので、このような交流が積極的に行われるようになればいいなと思います。

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世代間交流の研究から病院ボランティアに活かせること

世代間交流の研究結果から、病院ボランティアに活かせることはあるでしょうか。

病院は積極的に行きたい場所ではありません。でも、病院で世代間交流ができれば「病院=怖い・痛い」ではなく、「交流ができて楽しみ」というプラスのイメージに変換できるのではないかと思います。
また、医療従事者と病院ボランティアといった職種間交流が広がれば、特別な資格がなくても、医療従事者と患者・その家族のお互いの気持ちや思いをつなげる存在になれるのではないでしょうか。「患者さんがこういうことに悩んでいるから、こんな交流ができるのかな・・・」といった情報共有を医療従事者にすることでプラスに働くこともあると感じます。

病院ボランティアの活動が、患者さんだけでなく医療従事者にとってもメリットがあるということでしょうか。

医師や看護師さんに対するイメージは患者さんによって様々です。そのイメージを、第三者である病院ボランティアさんがプラスのイメージを加えて患者さんに伝えたりすることで、患者さんが医療者への信頼を増すことができるのではと思います。

このように感じるのは、私が児童養護施設でアルバイトをしていた経験からきています。児童養護施設の子どもは、職員さんは様々な仕事を受け持っていることを理解しています。そんな時、ボランティアや、私のようなアルバイトが入ることを、子どもたちは遊び相手や、たわいもない話を聞いてくれる相手が出来たと認識し、喜んでくれる場面がありました。

それと似たようなことが病院であるのではないでしょうか。患者は医師を絶対的な「先生」であると捉え、治療に関すること以外、例えば自分の思いなどを気軽に話せる存在とは認識できないことがあると思います。でも病気を患っている時の不安は大きく、そんな時に「治療はできないけど、話を聞くことや一緒に時間を過ごせるよ」というボランティアが入ることで、患者さんは遠慮を取り払って、本音ベースで話ができるのではないでしょうか。

そこから出てきた患者さんの悩みを、先生や看護師に共有することで、医療従事者は患者さんの不安点を把握した上で治療方針やその説明を患者さんにすることができ、不安を払拭できれば今まで以上に治療もスムーズになる可能性があると思います。
そうなれば、患者さんと医師・看護師さんとの間に信頼感が生まれよりスムーズに治療を進めることができるのではと思います。

沖野 広香さんの病院ボランティアインタビュー写真

吉田准教授へのインタビュー

介護の現場で、世代間交流が持つ効果というのはどのようなものがあるでしょうか。

介護職員として現場にいた時に、子どもが訪ねてくることで職員の私では引き出せない笑顔を高齢者から引き出してくれるのだなと感じたことがあります。高齢者の方々は「また来るかな」と子ども達の訪問を楽しみにしていたり、子どもからもらったものを大事にしてすごしているんですね。そういう様子から、介護現場において、「マンネリ化した日常のなかの刺激」として世代間交流がうまく取り入れられるのではないかと感じています。

介護の現場で、外部の人間が入る時に注意すべき点はありますか。

職員の立場としては、感染症が一番のリスクなので、外部者への感染、また外部から感染を持ち込まれることに気をつけるべきだと思います。またの子ども場合は、力加減が難しい所があるので、大勢が会する時は、職員が近くにいてサポートできる体制が必要だと思います。

介護の度合いなど、高齢者の方が様々な交流するにあたって難しいラインというのはあるのでしょうか。

先ほどお伝えした感染症などのリスク回避ができていれば、介護の度合いによって交流が制限されることはないと思います。どんなに重い疾患を抱えている方でも訪問者を受け入れる患者さんであれば、世代交流を妨げるものはないでしょう。言葉でのやり取りが困難だとしても、一緒に過ごす時間と空間を楽しむことができれば、どんな方でも世代間交流ができるのではないでしょうか。

沖野 広香さんの病院ボランティアインタビュー写真

日本が長寿国から健康長寿国になるために必要なポイントは何だと思われますか。

心の満足度ではないでしょうか。「明日も生きていたい」と思えるような出来事がその人の中にあるか、周りがその刺激になれるかどうかが、健康寿命を延ばすことに影響すると思います。

「明日も生きていたい」という刺激になっている事例はありますか。

最近は認知症カフェに注目しています。(※認知症カフェとは・・・認知症の人、家族、地域住民が中心となって、交流や情報交換を目的に開かれているカフェ。厚生労働省も国家戦略として普及を推奨している)

世田谷のある認知症カフェでは、地域の民生委員さん(※民生委員とは・・・民生委員法によって規定されている市区町村ごとの民間の奉仕者)が中心になって活動しており専門家は誰も入っていません。もともと地域に住んでいる方が民生委員になっているので、カフェでは地域の高齢者とも顔見知りという間柄です。「あんた小学校のとき、こうだったよね〜」と言われながら、民生委員さんが中心になって、漫談があったり、歌があったり、お茶がでたり、お汁粉をふるまってくれたりするカフェです。民生委員さんからすると「昔お世話になった近所のおばちゃんを、今私たちがお世話する」という地域密着の世代間交流になっており、それを目の当たりにすると「地域の互助は本来こういう形なのだろうな・・・」と学ばされます。

互いに助け合うという交流が自然に行われることで「歩けるようになりたい」「トイレは自分でできるようにしていなきゃ」「健康でいなきゃ」という前向きな思いが生活意欲につながり、結果的に健康寿命を延ばすことに影響してくるのではないでしょうか。

もう一つ注目すべきは、高齢者の方が外出するきっかけが自然と行われている点です。民生委員さんに「来月は22日ですよ」といわれると、「じゃあ来月くるね」となり、高齢者は「カフェに行くのは、3週間後だな」「2週間後だな」「来週だな」「もう明日だ」と、振り返れば1ヶ月たっていた・・・という心境ではないでしょうか。

このように「楽しみが待っている」という刺激を周りが作ってあげられる事例として認知症カフェの存在は大きいと考えています。私たち専門家たちが声をかけてできるカフェもあるのでしょうが、「それぞれの味」というのは、地域ならではで、専門家が誰も入っていないからこそ出せる味があると感じます。

沖野 広香さんの病院ボランティアインタビュー写真

学生の研究を指導する際に大切にされていることについて教えてください。

とにかくフィールドに出ることが重要だと感じています。知識は、教科書や本を読むことでたくさん得ることができますが、「そこでは得られないもの」そして「二度と同じことが起こらないこと」が世の中にはたくさんあって、それは現場に出なければ分からないし、同時に数値化することが難しいものです。人のあたたかさとか、その反対の感情といった人として当たり前のことを感じられるようためにも、現場に出すことにこだわりたいと感じています。

学生に「学んでほしい」と期待していることを教えてください。

今の子ども達は、情報化社会の中で育っているので、知識はたくさん持っているし、頭がよく、専門家になる勉強ができるなと感じます。一方で、「私は専門家」という権力を振りかざしているその危うさを感じることがあります。数値化して見えること、効率化できることの方が何か素晴らしいことのように思っている節を感じることがあるんですね。

だからこそ、「人をみる、人と関わる、人に寄り添うことって、どんな行動が伴うものか」を学んでほしいと感じます。効率化に走るのではなく、学生だからこそ「人の中に入って、人と関わっていくこと」ができると感じます。

そういう時間を過ごさずに社会に出ると、大きな歯車の中で人と関わる時間が持てず、それがジレンマになっていく・・・というケースは決して少なくないのではないかと感じています。だからこそ学生の時にこそ時間をとって、人と関わって寄り添うことにはどんな行動を伴うのかを直に学んでほしいですね。

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