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松本 公一(まつもと きみかず)さんの病院ボランティアインタビュー写真

小児がん医療の拠点病院は全国に15施設あります。その拠点病院を牽引し、小児がん医療の質を向上させるために国は「小児がん中央機関」を2つ設けました。その一つである国立成育医療研究センターの小児がんセンター長である松本公一先生に、小児がんの現状と課題、臨床研究や病院ボランティアに対する思いをお話しいただいきました。

小児がん医療の現状と課題

松本先生は小児がんを専門にされていますが、小児がんは小児医療の中でどのような位置にあるのでしょうか。

厚生労働省が平成24年に発表した人口動態統計による「小児が命を落とす主要疾患」を見ると、「悪性新生物」は1〜4歳では第3位、5〜9歳では第2位、10〜14歳では第1位であることがわかっています。このように、小児がんは小児の死因として大きな位置を占めていることがわかります。

小児がんの特徴はどのようなものがあるでしょうか。

まず、「小児がんの年間発症数は2000〜2500例と発症そのものが少ない」ことが特徴としてあげられます。(成人がん患者数は69万人)

次に、「小児がんの治癒率は高い」ということです。小児における白血病などの血液腫瘍の治癒率は約7〜8割とも言われています。これは、小児がんの治療に使用する薬剤の効き目が非常に強く、がん細胞に効果的な標準治療が確立されていることが背景にあります。しかし、成長段階にある子供たちの体に強い薬剤を使うことで、治癒後に「晩期合併症」を伴うケースがあることも事実です。このように小児がんは、がんの治療だけでなく治癒後のフォローも必要とされています。

そして最後に、「小児にしか発症しないがんがある」ということを忘れてはいけません。網膜芽腫や神経芽腫などはその一例です。そのため、小児でこのような希少がんを発症した方が成人になった時に「どの病院で診てもらえるのか分からない」ということが起こっています。

小児血液腫瘍の治癒率が約7〜8割と非常に高いことに驚きました。では脳腫瘍や神経芽腫、ユーイング肉腫などの固形腫瘍の治癒率はどのような状態なのでしょうか。

固形腫瘍の場合、非常に稀な腫瘍も多く、治療方法が確立されていないこともあります。もちろん固形腫瘍も、治療成績向上を目指した臨床試験が行われ、少しずつ治療成績がのびていますが、残念ながら、固形腫瘍の治癒率は血液腫瘍にくらべて一般的に低いのが現状です。

小児の固形腫瘍の治癒率を向上させるためには、小児科医だけではなく、外科や脳神経外科、病理診断科、放射線治療科といった様々な診療科の連携が必要になります。

小児がんに対して、国の対策は進んでいるのでしょうか。

平成25年の3月から「小児がん拠点病院」が全国に15施設設置されています。これは、厚生労働省が小児がん患者が必ずしも適切な医療を受けられていないことを懸念し、これを改善するために小児がん診療や支援体制の充実を図り、小児がんに関する積極的で効果的な施設を展開することを目的に設置されました。

この小児がん拠点病院に指定されているのが、北から北海道大学病院、東北大学病院、埼玉県立小児医療センター、国立成育医療研究センター、東京都立小児総合医療センター、神奈川県立こども医療センター、名古屋大学医学部附属病院、三重大学医学部附属病院、京都府立医科大学附属病院、京都大学医学部附属病院、大阪母子総合医療センター、大阪市立総合医療センター、兵庫県立こども病院、広島大学病院、九州大学病院となります。

小児がん拠点病院とその他の病院の違いはどのようなものがあるのでしょうか。

小児がん拠点病院にはいくつかの指定要件があります。例えば、化学療法や造血細胞移植・放射線治療・外科治療などをまとめて実施する集学的治療やエビデンスに基づいた一般的な治療方法である標準的治療の提供体制が整っていることをあげることができます。

その他にも、化学療法のやり方や期間などを定めるレジメン委員会の設置や、外科医・小児科医・放射線科医などが集まって、患者さんの治療方針を決めるキャンサーボードを定期的に行っていることも指定要件に入っています。これらの体制を提供することで、様々な視点から導かれた最良の治療を受けることができるようになります。

個々の病院や医師が論文を読んで思いつきで治療を行うのではなく、日本全体で定めた治療方針を推し進めることで、その治療法の改善点も明らかになり、効果的な治療法の発見がスピードアップすることにつながっています。

小児がん拠点病院の数は足りているのでしょうか。

地域別に比較すると、中国・四国地方における小児がん拠点病院は1つしかなく、その推定捕捉率は26.6%と言われています。また、東北地方も同じく捕捉率は28.1%で30%を下回っている状況です。

これは、北海道の47.4%、関東甲信越地方の35.3%、中部地方の41.0%、近畿地方の59.4%、九州・沖縄地方の38.6%と比較すると差があることがわかります。

成人の拠点病院の数が400ですので、小児がん拠点病院の15という数は少ないかもしれません。発症した地域で適切な治療が受けられるためには、拠点病院だけではなく地域の小児がん診療病院との連携が必要です。しかし、諸外国の状況から考えると、疾患によってはある程度の集約化が必要であると考えています。

地域によって、小児がんの診断や治療方法に格差が生じることはないのでしょうか。

小児がんは症例数が少なく、小児がんに関する情報収集や標準的治療が確立されていない疾患もあります。そんな状況を打破するために「診断支援」という仕組みがあります。

国立成育医療研究センターをはじめとする小児がん拠点病院では、診断が困難と判断された症例の相談が全国から寄せられる仕組みがあり、病理診断や放射線診断、遺伝子レベルでの分子生物学的診断を行っています。

この仕組みがあることで、どのエリアに住んでいても拠点病院と同等の診断レベルを確保できます。このように誰もが必要だと考える中央診断ですが、実施には財源の確保と次世代を担う人材育成が課題となっています。

国立成育医療研究センターとして小児がん医療の分野で変えていきたいことはありますか?

がん難民を減らすこと、そして固形腫瘍の標準治療の確立です。病院同士の垣根を低くし、どこの病院でも同じ治療が受けられるようにすることが目標です。

松本 公一(まつもと きみかず)さんの病院ボランティアインタビュー写真

小児がん医療の臨床研究

小児がんに関する臨床研究はどのように進められているのでしょうか。

小児がんの臨床研究を行う団体として、血液腫瘍をメインに臨床研究を行っていた「JPLSG」と小児固形腫瘍をメインに臨床研究を行っていた「固形腫瘍共同機構」がまとまり、2014年12月にJCCG(日本小児がん研究グループ)というオールジャパンの臨床研究グループが設立されました。JCCGでは、小児がんの最先端で最良の治療成果を日本や世界各国の子ども達に届けることを使命と考えています。

このJCCGが、白血病などの血液腫瘍や、神経芽腫、横紋筋肉種、肝芽腫など固形腫瘍の臨床研究を推進しています。それ以外に、新薬の開発なども企業主導治験、医師主導治験という形で進められています。

ひとつお伝えしなければならないのは、臨床研究を進めてより効果的な治療方法を確立するためには「小児がんに関するデータ収集が不可欠である」ということです。

特に、現状では、詳細な治療歴を含めた小児がん登録を入り口とした、長期フォローアップの仕組みが出来ていないことが問題です。平成28年1月から「全国がん登録」が始まり、すべてのがんのデータを一元管理できるようになりました。しかし、「全国がん登録」といえども、詳細な治療歴を含んでいません。今後は、長期フォローアップの整備が重要であると考えています。

小児がん患者の生活や心のサポート

小児がんの子供達やその家族に対して「生活面でのサポート」はどのようなものがあるのでしょうか。

まず「小児がんに関する相談支援」があります。実は平成27年から小児がん拠点病院を対象にした「小児がん相談員研修」がスタートしました。がん相談員は、患者だけでは知りえない医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー・教師・保育士・ボランティアなどをつなげる役割を担っています。これによって、小児がん相談支援の均てん化と充実を目指しています。

また「小児がん患者の就学」は大きな課題です。特に高等学校の教育の遅れは顕著で、15施設ある小児がん拠点病院の中ですら、専属の教員が対応している施設は4施設にとどまっています。(2015年3月現在)

食事の問題も忘れてはいけません。治療をする中で食欲が落ちてしまうこともあります。しかし小児病院の中にはお母さんの手作り料理やジュースといった食べ物の持ち込みが禁止されている施設も少なくありません。それはアレルギーなど様々なリスクを回避するという背景があります。国立成育医療研究センターもその一つでしたが、看護師長をはじめ様々な方が尽力してくださったおかげで、現在は8階西病棟で土日に限って食事の持ち込みができる体制をスタートさせることができました。

精神面でのサポートはどのようなものがあるでしょうか。

私たちの病院では、精神面のサポートを「こどもサポートチーム」が窓口となって対応しています。メンバーは、小児がんセンターに所属する医師だけでなく、こころの診療部の医師、麻酔科医師・看護師・心理士・栄養管理部・保育士・ソーシャルワーカー・リハビリ技師など各専門分野で働いている50人以上が関わっています。様々な職種が入院時から関わることで、問題の早期発見につながっています。チームの発足によって在宅療養に移行できるケースが増えるなど効果も出てきています。

小児がん患者が求める病院ボランティア

松本先生から見て病院ボランティアの意義はどんなところにあると感じていますか?

医療者だけではできないことを提供してもらえることに意味があると感じています。国立成育医療研究センターでもたくさんの病院ボランティア活動があり、そこに携わるボランティアスタッフの方々は200人を超えます。外来での案内や、ボランティアショップ、絵本語り会、兄弟のお預かり、音楽コンサートなど活動範囲は多岐に渡ります。

病院ボランティアと病院の関わり方についてどのように感じていらっしゃいますか。

本来は、病院ボランティアの方々がやって下さったことに対して、きちんと対価を払うべきだと思っています。また、病院の中でのボランティアの地位をもっと上げていくべきです。

国立成育医療研究センターでは、年2回、病院看護師とボランティアの方が話し合いの場を設けていますが、もっと回数を増やし、広報誌にもボランティア活動をもっと取り上げていくべきだと思います。

病院ボランティアに求められる資質にはどのようなものがあるでしょうか。

病院ボランティアは、医療者には提供できない「外の風」を病児やその家族に届けてくれる存在です。そんな方々に求めることがあるとすれば、一人一人が病院に対する愛情をもっていただくことではないでしょうか。

また、「もっとこんなことができるのではないか」と感じていることがあれば遠慮なく発言していただき、医療従事者や病院の事務方と一緒になってお互い病院をよくすること、患者さんがハッピーになるように協力していただくことが重要だと感じています。

ただ、そういう感覚で活動してもらうためには、病院がもっと病院ボランティアの存在をリスペクトしていくことが必要だと感じています。

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